自由が丘校・白金高輪校が担当した筑波大学附属駒場中学校の分析を掲載します。
大問4題は例年どおりの構成となっている。大問1は数の性質、大問2はサイコロの問題、大問3は点の移動、大問4は容積の問題であった。
容積は数年に一度の出題だが、その他は筑駒ではよく出題される単元である。エルカミノ生にとっては筑駒算数講座や筑駒模試でこれらの単元はしっかり勉強をしてきたので、取り組みやすかったのではないかと思う。
ただし、40分間でこれらの問題をすべて解くためには高い処理能力が求められるという点はいつもと変わらない。
2024年度入試は大問3(1)(2)(3)、大問4(2)(3)のように「すべて答えなさい」という問題が目立った。こういった問題を正解するためには、問題文を正確に読み、条件に適したものを絞り込み検証するといった思考が必要である。
来年度の受験生は、筑駒算数講座や筑駒模試を通して、この思考を少しずつ身につけていくことが合格への近道となるだろう。
例年と違い、単体で詩の大問がない珍しい出題形式となったが、一過性だと考えられる。形式は違うものの、例年どおり問題文を正確に読み取り、簡潔に記述する力が求められた。
大問一
記述問題で理由を問う問題が2問出題された。本文を正確に読み取り、条件を理解したうえで対比的な視点で記述することが求められた。エルカミノでの記述演習の積み重ねで十分対応できた。大問一でいかに失点しないかが高得点につながる。
大問三
出典は、斉藤倫「ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集」である。
テストで作者の気もちがわからなかった子どもの「きみ」と「おじさん」の対話の中で詩が紹介され、わからなくても自分なりに答えを出すことの大切さに「きみ」が気づく様子が描かれている。「きみ」が「じゃがいものそうだん」という詩を読み、二ひきのじゃがいもも自分も正解ではないのかもしれないが、一生懸命悩み理解しようとしていたところが同じだと答えさせる問五を、いかに過不足なく記述するかが難しかった。
新しい言葉や表現に出会い、異なる視点を得ながら豊かな自分の世界を作ってほしいという筑駒からのメッセージが込められた問題であった。
大問6題の構成。
[1]水溶液の性質 [2]地学 [3]血液の循環 [4]動物の生態 [5]豆電球の回路 [6]てこのつりあい
大問数は昨年と同じで、分野も偏りなく出題された。分量や全体的な難度も例年どおりであった。
[6]は筑駒の理科でしばしば見られるタイプの力学である。土台に乗せた物体が傾かない条件を考える問題であり、2019年や2022年にも同様の設定の問題が出題されている。計算量・思考量ともに多く、過去問演習で類題を手早く処理する工夫を身につけていた受験生は有利に解き進められただろう。
[1]~[5]は標準的な難度の問題であり、点数に差がつきにくかったと思われる。[6]にどれだけ時間を残し、いかに効率的に解くことができたかが勝負の分かれ目となっただろう。基礎知識を正確に身につけていくのに加えて、計算問題においては一つの解法で満足せず、より効率的な解法がないかを考えることを意識してほしい。
大問3題構成は例年どおり。
大問1は関東大震災100年を切り口に南海トラフ地震への減災について考える。
大問2は明治神宮外苑地区再開発計画を切り口に、長期的な視点から価値を見直す。
大問3はテレビドラマ「17歳の帝国」を通してこれからのAI時代を考える。
それぞれ身近な事例を通して受験生に問題提起する内容で社会科の先生からのメッセージとして入試問題にとどまらない内容となっている。大問3のリード文最後の「異なる立場や価値観に触れて悩み抜くことこそが、AI時代の人間に求められる活動なのかもしれません。」は国語でも同様のテーマの出題がなされており学校全体の入試問題を象徴している。
特徴的な問題は大問2問7「再開発計画に反対する立場からの主張の根拠を」述べさせる問題だ。前述のテーマに通じる問題である。リード文を読んで考察すれば難しくはないが、リード文を無視した自分勝手な解答をすると得点はないことになる。筑駒は1問ごとの比重が重いのでここでの失点は合否を左右することになる。
過去問演習を通して出題傾向を踏まえ、ある出来事に対して二項対立的な思考をするような姿勢が対策となる。難度は例年どおり易しく高得点勝負となった。