目白本校・練馬校が担当した武蔵中学校の分析を掲載します。
小問集合、平面図形、速さ、場合の数の計4題の問題構成は例年どおり。合格者平均点が74.1点と高く、算数の出来が大きく合否を分けることになった。昨年出題されなかった速さも今年度はふたたび出題され、大問3まで手早く、正確に解き進める必要があった。それができた受験生は最後の場合の数に取り組む時間を確保でき、合格に近づいたはずである。大問4は書き出すことである程度対応できる。まずは(1)(2)(3)で問題の仕組みをふまえて、最後の(4)へとつなげていきたい。
ここ3年間論説文の出題が続いたが、今年度は物語文であった。
大正時代の北海道、家が貧しい「私」は試験を受け授業料がいらない附属小学校へ転入する。しかしその学校は良家の出身の子供が多く、引け目を感じた「私」は学業成績で彼等に勝つことを目標とする。しかし、後に転入してきた桜田もいが目覚ましい活躍を見せたことで「私」は複雑な心境におちいるのだった。
昭和14年に刊行された島木健作『随筆と小品』が出典であった。問六で、「私」が自分を超える成績を収める桜田もいに敵愾心を抱きつつも、自分以上に貧しい出身の彼女がいいところの家の子たちに打ち勝っていくことを称賛することについて相反する気持ちを答えさせる問題だった。登場人物の置かれた立場について、時代設定も含めて考えていくことがポイントだった。
大問[1]は、写真や図から判断して選択する問題であり難しくはないものの、このタイプの問題を苦手とする受験生は思いのほか苦戦したはずだ。また、例年どおり記述も出題されているので、武蔵を受ける受験生は記述対策もしっかりやっておきたい。
大問[2]は、自分でグラフを書く問題であったが、題材はよく見る“塩酸とアルミニウム”だったため受験生としては解きやすかった。
大問[3]は、おなじみの“観察問題”。スティックのりやリップクリームなどに利用されている「くり出し式容器」を観察しながら仕組みを考察させる問題だったが、図を使わずに文章だけで回転の仕組みを説明するので、論理的な記述力が要求された。
長い問題文を読み問題に答えるという例年どおりの出題形式であった。
今年度は労働についての文章で〈近代以前の生業と労働〉〈賃金労働の広がり〉〈労働における性別の問題〉〈「支払われない労働」〉〈労働のあり方を考える〉といったテーマであった。
問6(あ)は図4の男女それぞれの仕事(賃金労働)等の時間と家事・育児・介護の時間の平均を表したグラフを見て、「仕事等と家事・育児・介護における性別の偏りについてここから分かることを書きなさい」という論述問題である。グラフから男性と女性の仕事や家事に従事する時間の違いを読み取り、そこから分かることをまとめる記述力が必要になる。
また問7は「『ワーク・ライフ・バランス』を保つことが、現代社会が抱えるさまざまな課題の改善にどう結びつくのか、それらの課題のうちの1つをあげて説明しなさい」という問題であった。働き方改革などの時事問題を知っていることは当然として、具体例をあげながら現代社会の課題改善について書かなければならない。
思考力を試される問題は例年どおりで、問題文の指示を理解できるだけでなく、広く現代社会の課題について知っておく必要がある。そのためには日頃から時事問題に関心を持ち、自分でも調べることが大事だ。