みなさんこんにちは。
さて、本日より4日間、こちらのブログにて首都圏の入試傾向分析を掲載していきます。
まず開成中と武蔵中を掲載します。
開成中は本郷三丁目校責任者の吉田、武蔵中は吉祥寺校責任者の早川が分析を行いました。
<開成中学校>
算数 |
3年ぶりに計算問題や一行問題のない構成となった。後半に難しい問題があるため、時間内の完答は厳しいが、大問[1]の旅人算、大問[2]の立体図形(下図)は全問正解したい。
大問[3]は場合の数、大問[4]は推理の問題で、どちらも(1)は易しく、(2)は難問。どちらかの(2)が解ければ合格に大きく近づく。
大問[3](2)において、図3では10通りの経路あるが、これが(1)の図1と同じだと気づけば、図4も図2と同じ数の経路があると判断できる。図5も同様に考える。
大問[4](2)で背理法が出題されている。エルカミノ生にとっては慣れている手段だが、背理法は本来中学入試で出題されるものではない。
国語 |
大問[1]が物語文、大問[2]が随筆文。すべて短い記述問題で、選択肢問題がひとつもないが、数年おきにそういう出題が見られるので、珍しいわけではない。
大問[1]の物語文では、主人公がどのように変化し、成長していくのかを読み取る、開成が好むストーリー。生活に負の感情を抱いていた主人公が、最後の傍線4では感謝の気持ちに変わる。設問もその変化について聞いている。
大問[2]の随筆文では、筆者のエチオピアでの体験と日本での暮らしの対比を述べている。不便な生活であったエチオピアでの生活を筆者はなぜプラスと考えているのか、便利な日本での生活をなぜマイナスと考えているのかを考える。シンプルに対比させればよい。
理科 |
大問[1]は、水が氷になることを詳しく観察した結果を選ばせたり考えさせたりする問題(下図)。単に知識を確認するのではなく、日常生活の中で起こる水の循環などの科学現象をいつも考えているかを問う内容だった。
大問[2]は、化学分野で重要な分析技術であるクロマトグラフィーに関する出題。開成では、あまり出題されることのない高校範囲の科学技術に関する出題だが、説明をよく読めば解けるレベルである。
大問[3]は誘導フェロモンのはたらきを知るための実験、大問[4]は金属の熱伝導の標準的な問題。どちらも表やグラフを読み解く。全体的に易しく、普段の宿題レベルの難易度だった。
社会 |
大問[1]は歴史分野。ほとんどが小5レベルの内容で、全問正解したい。その上でのスピード勝負となる。
大問[2]は地理分野。8つの有人島に関する説明を読み、それぞれの設問に答える。基本問題ばかりだが、一部にやや難しい問題もある。統計問題に手こずると時間がなくなるので要領よく解きたい。
大問[3]は公民分野。基本問題しか出題されておらず、ミスは許されない。社会は昨年以上にさらに易しい構成だった。
<武蔵中学校>
算数 |
大問[1]は数字の31を扱った問題。「約数すべての逆数の和」という表現に驚くかもしれないが、通分して考えれば約数すべての和を160でわればよいとわかる。よくある問題のひとつ。
大問[2]の平面図形(下図)は、三角形GFCをFCで折り返す。武蔵ではよくある“補助線”だが、思いついた受験生は半分ほどではないだろうか。大問[3]の点の移動、大問[4]の調べ上げでは差がつきにくいため、この“補助線”が合格のカギになる。
大問[4]は難しくしようとすればいくらでも難しくできる題材だが、試験時間内に解けるよう易しめの難易度に調整されている。
国語 |
武蔵では論説文と物語文が交互に出題されており、昨年度は論説文だったので、予想どおり今年度は物語文であった。
戦時中の沖永良部島の話であり、桜蔭も同じ文章を出題している。出典は中脇初枝『神に守られた島』である。方言もあり読みにくいが、内容はつかみやすい。何度も書かれている「戦争なんだからしかたがない」という言葉から、戦争当時の登場人物の心情や考えを的確に読み取りたい。
問六の「伍長はもう神さまではなかった理由」を時代背景も含めて解答に書けたかどうかが国語の点差につながった。
理科 |
大問[1]は、植物の光合成から始まる炭素の循環を、二酸化炭素の検出によって認識する問題。環境や生態系の生物分野と化学分野の組み合わさったものだった。大問[2]は潮だまりでの観察に関して、潮の満ち引きが月の満ち欠けと関係していることや、生物の多様さを生み出している環境的な要因についての出題だった。
大問[1]と大問[2]は、例年よりもオーソドックスな内容だったので、ほとんどの受験生が記述を書けたはずだ。一方、“お持ち帰り問題”の大問[3]では栞(しおり)を分解してしくみを想像するという、今までの武蔵にはなかなか見られない問題だった(下図)。
大問3に戸惑ってしまう受験生も多かったと思うが、観察力と正確な記述力が必要とされるのは例年どおり。問題の流れに従い、問1でわかることを的確に表現したい。
社会 |
江戸時代の鎖国と現代社会の移民問題を対比して考えさせる問題である。鎖国時代の漂流民がどのような人生を送ったのかを考えることが、現代社会の移民問題にもつながる。また、御前崎から江戸までの海岸線を描かせる問題が出題された。
平清盛や足利義満、日米修好通商条約など基本的な知識は、普段から授業で指導しているようにきちんと漢字で書く必要がある。
和船と洋船を比較し、構造上の特徴を指摘させる問題など(下図)、図やグラフから分かることを読み取り論理的に説明する力が求められている。
以上、開成中と武蔵中の入試分析でした。
明日も引き続き入試分析の記事を掲載いたします。